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女性医療ネットワーク主催公開セミナー
「母娘で考えるメタボ対策」開催

2009.03.08

2009年3月8日、主婦会館プラザエフにて、女性医療ネットワーク主催の公開セミナーが開催されました。成人男性のイメージが強いメタボですが、いまや女性も子供の無関係ではありません。当日はメタボの治療や対策についてさまざまな意見がかわされました。

生殖年齢の女性メタボ対策穴澤園子先生(済生会中央病院 糖尿病・内分泌内科)

穴澤園子先生メタボリックシンドロームの元凶は、内臓脂肪にあります。一般的に内臓脂肪は男性に多く、皮下脂肪は女性に多い。内臓脂肪は出入りが早いので例えるなら普通預金、そして皮下脂肪はゆっくり貯めてコツコツ増えるので、定期預金といえるでしょう(笑)。

女性の年代別の肥満度をみますと、若いころは肥満度が低いものの50歳を過ぎたころから肥満度が高くなる傾向があります。20〜40代は皮下脂肪型、それを過ぎると内蔵脂肪型の肥満となり、閉経すると女性ホルモンの低下によって急激にメタボが増えます。

妊娠と女性のメタボリックシンドロームについて

妊娠中の病的変化としては、妊娠糖尿病や妊娠合併症があります。妊娠するとインスリンの抵抗性は増します。すると分泌も伴って高まるので普通バランスは崩れませんが、もしインスリンの分泌に陰りがあると、妊娠中の抵抗性の増大に対抗しきずにバランスが崩れてしまう。大抵お産が済むと元に戻りますが、妊娠糖尿病だった人はメタボになりやすいというデータもあります。

うちの病院のデータですが、妊娠糖尿病の人はそうでない人に比べて、BMI25以上の頻度が4倍くらいになります。出産後にいったんよくなりますが、妊娠は将来のその人の健康をみる上でとても大切な時期。人生の負荷試験といえるでしょう。

妊娠糖尿病であった人は、肥満を解消しないと糖尿病のリスクは高まります。もっともリスクが高いのは、定期検査からドロップアウトした人。ようするに「病院で定期検査を受ける」ということが、発症の歯止めになっているわけです。
たとえば血糖値が高めな人も、出産後1ヵ月くらいは正常化しているんです。でも次第に子育てが忙しくなると病院に来なくなっちゃう。すると症状が進んでしまうわけです。そのためにも産科から内科への引継ぎが非常に大事なんです。今は病院としてフォローアップの態勢、つまり定期検査のドロップアウトを少なくするための方法を模索中です。

次世代のメタボを防ぐための母の役割

そして次世代のメタボの予防に母親は大事な役割を担っています。
そのひとつが低体重児と成人病との関わりが深いこと。日本では、体重2500g以下の低体重児が年々増え続け、昨年10%を超しました。原因としては母体の栄養不良と、胎盤の血流障害が考えられます。特に栄養不良に関しては極端なダイエット、血流障害は喫煙、妊娠中毒症などが原因と思われます。次世代のメタボを増やさないためにも禁煙や正しい食生活が重要だといえるでしょう。

また閉経後に多い女性の健康障害も、ある日突然おきるわけではありません。若いうちから過食を避けて適度な運動をし、定期的な健診を受けましょう。また妊娠中に合併症があった人は、出産後のフォローアップも忘れないようにしましょう。

生殖年齢の女性メタボ対策原光彦先生(東京都立広尾病院小児科部長)

原光彦 いま日本は平和で食べ物に満ち溢れています。そして親たちは皆「子供に美味しいものを食べさせたい」と願っています。
しかし近年は子供たちの間でもメタボリックシンドロームが急増しています。そしてたとえ子供でもメタボになると、動脈硬化や糖尿病を引き起こします。メタボのベースとなる子供の肥満はここ 30年ほどでは2〜3倍に増え、いまや小学校高学年の10人に1人が肥満という時代になりました。

子供の肥満は「思春期になれば自然にやせるはず...」などと楽観視されがちですが、子供の肥満は大人の肥満につながりやすく、また思春期の肥満を大人になってから解消した場合でも、冠動脈疾患による死亡のリスクが高いことが分かっています。

子供のメタボは腹囲身長比で判定

こうした子供のメタボに対する取り組みとして、2007年に厚生労働省の研究班が「子供のメタボリックシンドロームの診断基準」を発表しました(下図参照)。

診断方法は大人も子供も同様で、内臓脂肪型肥満(腹部肥満)に加えて血清脂質異常、血圧が高め、血糖値が高め、といった3つの危険因子のうち、2つ以上に該当した場合は、メタボリックシンドロームと診断されます。
もちろん判定基準は大人とは異なり、子供の内臓脂肪型肥満の基準値は腹囲が80cm以上です。しかし同じ子供とはいえ小学校1年生と中学校1年生では、ずいぶんと体格が異なります。そこでよく用いられるのが、腹囲(cm)を身長(cm)で割った「腹囲身長比」。腹囲身長比が0.5以上ならお腹まわりが身長の半分を超えているということですから、この場合は腹部肥満と判定されます。

この「腹囲身長比」は子供の診断基準にしか書かれていませんが、これは肥満度とも相関があるので実は大人にも当てはまります。また人種や性別に関係なく使える、非常に便利な方法です。メジャーが1つあれば簡単に割りだせますので、ぜひ試してみてください。私はメジャーを常に持ち歩いて、周りの人から嫌がられています(笑)。

大人と子どものメタボリックシンドローム判断基準

食べる量を減らすよりも食べるものに意識を

子供のメタボの解消には食生活の見直しが不可欠です。しかし大人と同じようにただやせればいいわけではなく、正常な発育を妨げずに内臓脂肪を減らすことが重要です。カロリーのことを言うと皆さん耳を塞いでしまう傾向があるので(笑)、「量を減らすよりも食べるものを選んでください」とアドバイスするようにしています。たとえばファストフードよりご飯、白米より玄米、肉より魚、など工夫次第で食事は改善できます。特に魚にはヒスチジンというアミノ酸の一種が含まれており、これを摂ることで食欲抑制効果があることが分かっています。

そして子供は美味しいものに敏感です。子供はファストフードが大好きですが、同じように出汁のきいた食事も好みます。そのため小さいうちから出汁の風味を覚えさせておきましょう。

また食事だけでなく、生活習慣の改善も重要です。早起き、早寝、それから朝ご飯をしっかり食べるなど、規則正しい習慣を身につけさせましょう。一度身に付いた生活習慣を思春期以降に改善させるのは難しいので、小さいうちからライフステージに沿った改善を母親や周りの大人たちが協力して行うことが、メタボの予防・解消につながります。

更年期以降のメタボとコレステロール田中裕幸先生(医療法人ニコークリニック院長)

田中裕幸先生 性差医療が叫ばれる昨今ですが、私はコレステロールやメタボにも性差があると考えています。たとえばLDLコレステロールの140という値は女性と男性が同じでいいのでしょうか?

悪玉コレステロールであるLDLですが、中性脂肪が増えると血液中の善玉コレステロール(HDL)の量が減少し、LDLの粒子が増えます。粒子が増えるということは1個1個の粒子が小さくなりますので、これがさらなる危険を引き起こします。なぜなら普通のLDLに比べて小型のLDLは長く血液に長く止まって酸化されやすくなりますので、血管の老化を促進。動脈硬化のリスクを高めてしまうのです。

女性ホルモンには善玉の増加を助ける作用があるため、血液中の善玉の量は男性より女性のほうが多く、そのためLDLの量が多くてもHDLが高く、中性脂肪が低い女性はLDLの酸化が起こりにくく、動脈硬化は進みません。しかしHDLが減少し、LDLが小さくなったメタボの人たちは、動脈硬化の危険が高まります。

このことから分かるように、一般的にメタボと動脈硬化のガイドラインは違い、メタボと高脂血症は独立した危険因子といわれますが、それは男性の場合。女性はLDLと中性脂肪に相関があるため、分けて考えてはいけないんです。

メタボの影響は男性より女性のほうが大きい

内蔵脂肪細胞の肥大がメタボの本質なんですが、脂肪細胞は分裂しません。
たとえばウエスト70から80になると脂肪細胞の面積は増えますが、個数は変わりません。脂肪細胞の量は男性より女性のほうが少なく、女性で腹囲が100センチなんていう場合は、脂肪細胞の肥大が進行し、動脈硬化もかなり進んでいるわけです。また内臓の脂肪面積が増えるにしたがい血圧も高くなります。血圧は男性より女性のほうが急に上がるし、HDLは急に下がる。結局、メタボの影響は女性のほうが大きいのです。

日経メディカルが5つの地域で調べたデータによると、HDL40は77〜78センチあたりでした。つまり「腹囲90センチ」を基準にしていると、日本女性の動脈硬化はそれまでにどんどん進んでしまうわけです。また腹囲の基準が男性より大きいというのは医学的にナンセンス。このことからも、日本のメタボの基準値は見直したほうがいいといえるでしょう。

性差を考えたメタボ対策を

次に脂肪酸と動脈硬化、血清脂質の話ですが、脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、後者はリノール酸系(n=6系)とαリノレン酸系(n=3系)に分けられます。そしてαリノレン酸系にはEPAとDHAがあり、摂取量が多いと動脈硬化は抑制されます。これらが多く含まれるのはやはり魚。魚にもコレステロールが含まれますが、それは問題ありません。やはり魚中心の和食がメタボ予防には最適でしょう。

男女の違いとしては、男性でLDLが高い人はDHAもEPAも正の相関にあります。全部が高い。一方、女性のHDLは魚と肉で上昇、植物油で減少します。また中性脂肪と脂肪酸の関係では、男性は肉と魚、女性は植物油で上昇します。

女性が何でそんなに多く植物油を摂っているのか? それは実はお菓子なんですね。特に女性の50代からは男性よりも果物、乳類、そしてお菓子の摂取が多い。脂肪の摂取は男性も女性も年齢とともに減っていくのに、女性のお菓子特におせんべいなどの摂取は増えているのです。つまりリノール酸を含むお菓子の摂り過ぎが女性の脂質異常に大きく関係しているということなのです。このことからも性差を考えたメタボ対策が重要といえるでしょう。