1. ホーム
  2. 活動報告
  3. セミナー報告
  4. 2008.11.09 女性医療ネットワーク主催公開セミナー「乳房をとりまく総合医療の実現」開催

女性医療ネットワーク主催公開セミナー
「乳房をとりまく総合医療の実現」開催

2008.11.09

2008年11月9日、持田製薬内ルークホールにて、女性医療ネットワーク主催の公開セミナーが開催されました。いまや20人に1人が乳がんになっているといわれる日本の現状やこれからの乳腺外来の在り方、予防医学などについて活発な意見がかわされました。

乳腺甲状腺センター立ち上げとその思いについて土井卓子先生(湘南記念病院 乳腺甲状腺センター長)

土井卓子先生先進国では死亡率が軒並み減少している乳がんですが、日本では毎年4万人の方が乳がんにかかって、1万人の方が亡くなるというのが現状。マンモグラフィの受診率も17%ほどですから、下降線になるまでにはまだ10年以上はかかるのではないかと思います。

日本の乳がん治療というのは、時代とともにとても大きく変わりました。たとえば乳がんが手術でしか治せない時代には、「いかに上手に大きくとるか」ということが最重要課題でしたが、その後EBMの至上主義時代、ナラティブ・ベースト・メディスン時代を経て、最近はアジュバントオンラインをはじめとする個別化医療の時代を迎えています。
現在の乳がん治療は「乳がんは全身病であり、全身と局所を分けて治療しなければならない」という考え方が主流です。治療の手段はホルモン剤と抗がん剤がメイン。オペをしなくてもいいような時代にはいってきたというのが最近の傾向です。

これらの治療法を一冊にまとめた「乳がん診療ガイドライン」の第一版が2004年に出版され、2007年には第二版が発売されました。その後このガイドラインの解説書も発売され、これは患者さんが読んでも分かりやすい内容になっています。

キーワード

ナラティブ・ベースト・メディスン

「(患者さんの)物語に基づく医療」という考え方。たとえば乳がんで、抗がん剤を使用した場合、効果があるのは約半数の45人くらい。となるとその人の生きる姿勢や金銭的な問題、病に対する心構えなどが非常に重要です。そういった個人個人の背景を考えて行う治療のこと。

アジュバントオンライン

患者さんの年齢や、ホルモンの状態、しこりの大きさなどをインプットすると、再発率と生存率などをシュミレーションしてくれるシステム。これを基にその後の治療方針などを決めることも多い。

医師だけでなくチームで取り組む新しい乳腺外来を目指して

乳がんの患者さんは、医師の私たちが見ていないところで実はいろいろな問題を抱えています。
まず「乳がんです」と告知されたときのショック、そしてそれを受け入れるための時間が必要です。次に治療は全摘か温存か? 医師はこの人でいいのか? 抗がん剤の副作用は? 家族へのメンタルケアはどうしたらいい? などありとあらゆることを迷うわけです。そしてこの迷いを誰かが助けてあげなくちゃいけない。でも医師にも看護師にもそれをしている時間はありません。だけどこれをクリアしないと患者さんは次にいけない、というところに今の医療の問題点があります。患者さんたちが私たちに求めているものと、我々が与えられるものにはかなりのギャップがあるのです。

そこでいま力を入れているのが「乳がん体験者コーディネーター」の育成です。これは乳がん経験者の方々が現在の乳がん患者さんに、同じ病気の体験者として自分の体験談を伝えたり、治療法に関するアドバイスなどを行うことを目的としています。がんという重荷に押しつぶされて毎日泣き暮らすのではなく、サバイバーシップを自分の中にもってほしい。そんなときにこのコーディネーターの方々の果たす役割は非常に大きいと思います。医療者から言われたことを落ち着いて考え、迷うことのできる逃げ場が患者さんには必要なのです。現在私が勤務している湘南記念病院には、この乳がん体験者コーディネーターの方と患者さんが直接触れ合える部屋を1つ設けています。

また乳がんを専門とする「ブレストケアナース」の育成も進んでいますので、医師や検査技師だけでなく、これからはブレストケアナース、乳がん体験者コーディネーターの方などと幅広く横のつながりを作り、意識改革をしながら新しい乳腺外来を作っていく必要に迫られているのではないでしょうか。

「オッサンデファム(Au Sein des Femmes)」日本支部
〜女性の乳房と健康を守る会〜の設立について増田美加さん(女性医療ジャーナリスト)

増田美加さん医療のことをわかりやすく正確に伝える記事を女性誌や単行本などに執筆しております、女性医療ライターの増田と申します。私は2006年に乳がんになり、それをきっかけに今年「乳がん体験者コーディネーター」を取得致しました。そしてこのたび「オッサンデファム日本支部〜女性の乳房と健康を守る会〜」を設立することになりましたので、今日はそのご説明をしたいと思っております。

オッサンデファムはフランスに本部があり、乳がんに詳しいドクターや乳がんの患者さんたちを中心に結成された、NPO団体です。代表はボルドーで婦人科のクリニックを開業されております、ベランジェール・アルナールドクターが務めております。ドクターからいただいた資料によりますと、フランスの乳がん患者数は現在5万3千人。35歳〜55歳の女性の死亡原因のトップとなっています。またフランスのマンモグラフィの検診受診率は、OACDのデータによると 72%、しかし乳がん患者数が増加の一途をたどっている日本は、なんと4.1%という低い受診率となっています。

このような状況にある日本女性たちに乳がん検診の大切さを伝えたり、健康を守るための情報発信をしたい、それが日本支部立ち上げのきっかけです。具体的な活動内容としては設立の目的にもありますが(下記参照)、フランス本部と情報交換してヨーロッパの状況を日本に知らせたり、日本支部独自の情報発信も展開していきたいと思っています。

海外の視察などを通して、私は日本は世界でトップレベルの医療を受けられる国ではないかと思っております。特にこの女性医療ネットワークの先生方の「女性の心と体を全体でとらえて、健康を支えよう」という志は世界に誇るべき発想であって、逆に日本から世界に発信していくべきだと思っております。では医療現場において、日本は何が遅れているのでしょうか? それは先ほど土井先生がお話なさったように、「患者と医療者をつなぐ役割」を担う人が少なすぎるということです。それからもうひとつは患者側の姿勢。医師と上手にコミュニケーションをとるためには、患者側の知識や理解も必要なのです。そのための情報をこの会を通して発信していきたいと思っております。

オッサンデファム(Au Sein des Femmes)日本支部
〜女性の乳房と健康を守る会〜 設立の目的

●乳房の健康を守るために。
●女性が健康でいきいきとした人生を送るために。
●乳がんの予防を推進するために。乳がん検診を受けましょう。
●乳がんの再発、転移を阻止するために。
●女性が必要な健康&医療の正しい情報を入手するために。
●フランス(本部)の乳房ケアを中心とした乳がん医療、女性医療の現状、情報を日本で発信する役割を果たします。
●日本の乳房ケア、乳がん医療、女性医療の現状、さらに女性の健康を守るための国内の社会的な動きを、ヨーロッパに発信していきます。

ウェブサイト

フランスの女性の健康と乳がんの現状ベランジェール・アルナール医学博士
(Au Sein des Femmes会長/AMPP副代表/医学博士/産婦人科専門医)

ベランジェール・アルナール医学博士私はフランスで婦人科のドクターをしておりますが、乳がんにはフランスの女性も日本の女性も同じような懸念、不安を抱いていると考えております。フランスでは現在8人に1人の女性が乳がんになるといわれており、国民の健康、公衆衛生上、非常に大きな課題になっています。

そこで私は2007年の3月に「オッサンデファム」という団体を作りました。その目的は、もっぱら乳がんの予防であります。医師として女性の声に耳を傾け、個人的な事情も十分にくみ取りながら、患者と医師が対等の立場で対話ができるようにしたい。女性たちにもっと自分の体に責任をもってほしい。そのような思いを持ってこの団体を運営しております。

乳がんの原因には大きく8つのものがあります。まず5〜8%に先天的な要素があり、後は環境汚染、喫煙やアルコール、化学物質、ホルモン剤、悪い食生活、ストレスなどの後天的な要素があります。乳がんの予防のために現在できることは、禁煙、正しい食生活と運動、合成ホルモン剤を10年以上使わないこと、ストレスをためないこと、最初の妊娠を30歳より前にすること、などが挙げられます。

また乳がんの治療の一部や予防に関しては、化学療法および放射線療法などに加えて、フィトセラピーを始めとする自然療法や代替療法を推進しております。これらによってがんの予防をフォローしたり、再発と転移を防ぐための考察を進めていきたいと思っております。女性がいつまでも美しく健康であるために、今後とも皆さんで力を合わせていきましょう。

ニューヨーク視察報告対馬ルリ子先生(ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック院長)/石見雅美さん

対馬ルリ子先生石見雅美さん10月に「Young Japanese Breast Cancer Network」(BCネットワーク)という団体の乳がんに関するセミナーに招待いただき、ニューヨークへ行ってきました。今日はそのご報告をさせていただきたいと思っております。BCネットワークは代表の山本さんを中心に乳がんを経験した日本女性たちで結成され、乳がんに関する情報や健康についての情報を発信しているNPO団体です。ニューヨーク日本国総領事館で行われたセミナーでは、テキサス大学の上野直人先生の講演も行われ、盛況のうちに終了しました。

翌日からはコロンビア+コーネル大学のプレスビテリアン病院の見学に行き、特にウィメンズヘルスセンターと小児科・産科施設を見学させてもらいました。プレスビテリアン病院は入院患者数が11万3787人、外来の患者数が110万人、医師の数だけでも5588人と2006年度全米トップの6位にランキングされている病院で、この病院はニューヨークの誇りなのだそうです。開放的なスペースの婦人科内診室を見学したり、性差医療の大家マリアント・レガト先生にお話をうかがったり、ストレスケアを含めた肌トラブルの治療に取り組む皮膚科の開業医を訪ねたりと、非常に有意義な時間を過ごしました。

これら施設の見学は、インターナショナルサポートチームが対応してくれました。通訳はもちろん、「こういう話が聞きたい」とリクエストすると、それに対応するドクターが来てきちんと説明をしてくれます。これらのサポートは患者さんに対しても行われ、それらの費用はすべて病院がもっているそうです。そしてそのことが病院の評判を高め、病院の力を社会に広く宣伝することに役立つのだとか。全米第6位という高いホスピタリティをもつ病院をじっくりと見学でき、非常に有意義なアメリカ視察でした。