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女性医療ネットワーク主催勉強会
「女性医療の地域ネットワークづくり」開催

2008.03.09

2008年3月9日(日)、持田製薬内ルークホールにて、女性医療ネットワーク主催の勉強会が開催されました。各地域での様々な取り組みや女性医療の目指す方向性について活発な意見が交わされ、会場は熱気に包まれました。

女性外来をリードする横浜医療センターの取り組みについて土井卓子先生(国立病院機構横浜医療センター外科部長、女性診療外来担当)

土井卓子先生女性外来に携わる様々な先生にお話いただいた今回。まず最初に横浜市で積極的な女性診療を行う、土井先生よりお話がありました。

「私が女性外来開設後に行ったアンケートによると『担当医は女性がいい』という患者さんは全体の82.5%でした。しかしその後医師に行ったアンケートによると『自分から女性外来を志した』という人は全体の4分の1程度。上司から命令されてやっている、という女性医師も多く見られました。また女性外来について92%の医師が『通常の外来と違う』と答えており、その理由として"診察時間が長くてゆとりがある""トータルプライマリーケアを求められている"などが挙げられました」

そういった診察を通して『医師として変わった』と答える医師がいる一方で、医療の現場だけでは解決できないことも多いとか。

「そこで院外の協力体制を強化しました。女性外来で対応できないものは横浜市の女性センターと連携したり、栄養士や薬剤師に協力を仰ぐ、自助グループと連携するなどの対応をスタートさせたのです。特殊なスペシャリストをすべて病院に揃えることはできません。しかし私たちが横につながることで患者さんをサポートすることができるのではないか。たとえば腰痛、尿失禁、冷え性、更年期障害などは上手なフィットネスや体操を生活に取り入れることで、非常に効果がでます。この場合、大手のフィットネスクラブでは効果がありません。そこでスマイルボディ(下表参照)との連携を始めたところ非常に効果がありました」

行政やNPOとのつながりで女性外来のネクストステージへ

「またDV問題に関しても女性支援センターや男女共同参画センターに協力していただいたり、病院内の看護師の教育を徹底し、DV被害者への適切な対応ができるよう教育を行っています。こういった様々な取り組みを行うには、ひとつの病院の力だけでは到底無理です。行政やNPO、そのほかの専門病院と密接なつながりをもつことが大切です。ここ数年で女性外来はだいぶ浸透し、個室診療を始めとするアメニティ面も整ってきました。今後は専門性をもった医師や関係機関がより強力に連携をもち、さらに進化した女性外来を目指していきたいと思います」

横浜医療センターが連携している医療機関&団体

陰部痛、肛門痛の悩み

元町女性クリニック・LUNA
泌尿器の特殊な悩みについても幅広くサポートしてくれる。

ピルの相談、処方など

ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック
「ピル外来」でピルに関しての相談、悩みなどに対応している。

乳がんの術後ケアや尿もれ

NPOスマイルボディネットワーク
女性医療と連携した、骨盤底筋運動の指導を行う。

子宮筋腫、内膜症の悩み

たんぽぽの会
子宮筋腫、内膜症体験者の自助グループ。様々な情報を交換できる。

宮城県「女医会相談室」開設までの道のり小田泰子先生(小田眼科医院院長/宮城県医師会常任理事)

小田泰子先生千葉県の堂本暁子知事の講演をきっかけに「宮城県でも女性の健康のために何かできないか」との思いから設立された、宮城県女医会健康相談室。日本女医会会長の小田先生によると、その当時宮城県には健康相談室を行うための設備も人も揃っていなかったとか。

「平成13年11月に堂本知事の講演を聞き、わずか5ヵ月でスタートにこぎつけました。まさに電光石火の早業。会場は仙台市医師会館の一室を無料で借り、相談者は宮城県女医会の会員が無報酬で行うことにしました。しかし場所は確保できたものの予算がなく、相談を受けるための電話の設置場所と受付の人を雇う人件費が捻出できずに頭を抱えていたのです」

その問題を解決する大きな切り札となったのが、なんと携帯電話だったとか!

「相談には専用の携帯電話を使い、当番が終わったら次の医師へその電話を届けるようにしました。こうすると受付の人が必要ないので人件費も発生しません。最初はこのような形でスタートしましたが、その後地元の新聞が健康相談室を記事にしてくれたり、市や県から助成金をもらえるようになったりして、受付の人を雇ったり担当の医師に1回に2000円を渡すことができるようになりました。相談室の方針としては『1人30分話を聞く』ということを心がけています。これは話しているうちに、相談者自らが問題解決の道を見つけていくことが非常に多いためです。失業、夫の不貞行為、セックスレス、家庭内暴力など相談内容は様々。とにかく聞くことに徹することが大切なのです。また男性医師とのトラブルもあります。男性医師対女性患者にははっきりした上下関係があり「素人に話しても時間の無駄」「俺の診療を拒否したからもう診ないぞ」などの言葉に傷つき相談に見える方もいます」

日本女性がイキイキと輝ける世の中を目指して

「とにかく女性は男性と違ってきちんと仕事をしているだけでは評価されません。夫に対しては妻、子供に対しては母、両親に対しては娘といろいろな役割を求められるのです。国連開発計画の人間開発報告書によると、日本はジェンダーエンパワーメント指数(女性の社会参画指数)が93ヵ国中54位と非常に低い国。女性がイキイキと働き続けるための様々な支援が必要です。『明日を見る男性と足元を見る女性』という言葉がありますが、男性と女性が手をつないで共に階段を登っていくことが、これからの時代に大切だと思います」

薬局で女性の健康を支援するケイ薬局の試みについて宮原富士子先生(薬剤師/NPO法人21世紀ウイメンズヘルス研究会副理事長)

宮原富士子先生製薬会社勤務を経て、20年前からウイメンズヘルスに取り組んでいる、薬剤師の宮原先生。

「私の薬局がある浅草は高齢化が進み、医師がいくらいても足りない状態です。それに商売をやっている人が多いので、平日に店を休んで健康診断に行くわけにもいかない。そこで『保健師や薬剤師がもっと健康支援を働きかけていこう』との思いから浅草ケイ薬局では様々な取り組みを行なっています。」

「たとえば男女ともに患者さんが非常に多い高血圧。病院では正常値以下でしたら治療を行いませんが、薬局でその一歩手前、グレーゾーンの人たちにていねいな生活改善の指導をし、高血圧は発症を予防する取り組みも可能です。また薬局を基点にして栄養調査や骨量測定を行ったり、健康相談を受けるなど薬局のできる範囲はまだまだ広がっていくと思います。」

「しかしいくらそのような取り組みを行なっても、実際に病院を受診する人は全体の約1割。日本は『患者力』が非常に低いんですね。保険教育のレベルが低いので、こじれにこじれて女性外来にたどりつく人も多い。そこでわれわれ薬局が窓口となり、病院の受診を勧めるなどの情報発信も行なっていかなくては...と思っています。」

「また処方せんによる薬の費用は100円上がっただけでも大騒ぎなのに、サプリメントは高価なものを買っている方も多く見られます。そういった方に薬の正しい知識を与えたり、医師に簡潔に症状が伝えられない患者さんのために要点をまとめたメモを作成する、女性に月経記録のつけ方を指導するなど、セルフモニタリング、セルフケアの重要性を伝えたいと思っています」

医療従事者のつながりで医療の底上げを

「薬局というのは『物(薬)を売る』というお金を得るための仕事と側面と、『医療情報を地域に還元する』というサービス的な側面を兼ね備えています。日本の医療は医師に大きな負担がかかっていますが、実は医療資源はまだまだ眠っているものが多いんです。そこで女性の健康を支援するため医師だけではなく、薬剤師を含めた医療従事者のみんなが手をつなぐことによって、日本の医療の底上げが可能になるのだと思います」

ケイ薬局

調剤薬局としての通常業務のほか受診施設やセカンドオピニオンの相談、更年期や月経の悩みに答えたり、無料で栄養相談を行なうなど、地域社会の健康作りをサポートする様々な取り組みを行なっています。
台東区浅草3-4-1
TEL:03-3876-1506
定休日:日・祭日
ウェブサイト

地域の女性と連携したWe富山の活動報告種部恭子先生(女性クリニックWe富山院長)

種部恭子先生最後は富山の女性たちの健康と幸せを熱く支援する、種部恭子先生です。

「今日は皆さんのお話を聞いて『みんな地方でいろいろ活動しているんだ!』と非常にエンパワーされました。私の住む富山は女性の就業率が高く、持ち家率も全国トップ。富山の女性たちは母として嫁として妻としてだけではなく、稼ぎ手としても大きな役割を求められています。」

「私がクリニックの設立を決意したとき、まず最初に思ったのは、産婦人科の敷居を下げることでした。そこで富山県で活動するNPOなど様々な会を訪ね、キーになる人物を探し出すことにしたのです。たとえば富山県の産婦人科の受診情報を発信している「クリニックリストの会」。ここにはたまたま私の患者さんがいらしたこともあり、産婦人科に対する様々な苦情や不満を聞くことができました。
そのほか民間のDVシェルターを主催している「女綱」、フェミニストカウンセリングを行なう「ウィメンズカウセンリング富山」など、富山県で積極的に活動を続ける多くの女性たちと連携することで、女性たちが本当に求める病院作りへ向けて歩きだしたのです。その後2006年にクリニックをオープンし、現在は特にフェミニストカウンセラーの方々と連携して、様々な問題に関するカウンセリングや"自分の言葉を相手に伝える"ためのアサーショントレーニングなどを行なっています。」

一人で抱え込まずに地域と連携し、より大きな活動に

「いざ診察を始めてみると、たとえばDVを受けていても自覚がなかったり、心や体にトラブルがあってもどこの病院に行っていいか分からない......と訴える人が非常に多いことが分かりました。」

「私は心と体の不調を感じたときに来やすい窓口であれば、それは産婦人科である必要はないと思っています。女性のトラブルに気をつけてあげることができるなら、どんな病院でもいいんです。また今あるトラブルを解決するほか、これからの時代には啓発活動も大切。ジェンダーバイアスのない女性を増やしたり、DV加害者を作らないための矯正プログラムを作るなどの取り組みにも力を入れています。」

「そのためには医師が一人で抱え込むのではなく、地域と上手につながることがとても大切です。私が1人で病院の中でやっていても絶対に手は足りない。しかしこうやって地域の資源である女性たちとつながることでできることはどんどん広がっていくのだと思います」