1. ホーム
  2. 活動報告
  3. セミナー報告
  4. 2007.11.11 女性医療ネットワーク主催勉強会 「女性外来の診療に役立つ法律の知識」開催

女性医療ネットワーク主催勉強会
「女性外来の診療に役立つ法律の知識」開催

2007.11.11

2007年11月11日(日)、持田製薬内ルークホールにて、女性医療ネットワーク主催の勉強会「女性外来の診療に役立つ法律の知識」が開催されました。増加する医療訴訟や社会問題化するDV救済について、活発な意見が交わされました。

一般診療の法律的裏付けについて水島幸子先生(水島綜合法律事務所 所長)

水島幸子先生増え続ける医療関係の訴訟。患者側からの民事訴訟は平成9年が597件、18年は912件と過去10年間で倍増しています。そこで1時間目は「一般診療の法律的裏付けについて」と題して、医療関係者のとるべき予防策や対応策について、水島幸子弁護士よりお話がありました。

「民事裁判全体の平均では和解より判決が1.5倍多いのですが、医療裁判だけは非常に和解率が多いんです。そもそも和解できなかったから裁判に発展したのに、なぜ裁判にしたら和解できるのか? それをこれからご説明したいと思います。」

「まず、原告側が裁判を望む大きな要因は、医療事故に関して『病院や医療関係者が何か隠しているんじゃないか』という疑問。これが大きなフラストレーションになっているんです。しかし被告である病院側はなかなかミスを認めない。ここが大きな争点になるわけです。しかし裁判になると、病院側から診療経過一覧表が提出されるため、原告側のフラストレーションはだいぶ緩和される。そして被告である病院側は診療経過一覧表を作成することで、程度の差はあれ自分たちにも落ち度があったことに気付きます。これらが和解につながる大きな要因といえると思います」

医療事故を起こさないために医療関係者がすべきこと

「医療事故は、ちょっとした気の緩みや手違いから起こります。それはいつどんな瞬間に起きるか分かりません。医療関係者は『人はミスをおかすもの』という前提で物を考え、しっかりしたコンプライアンスを確立させることが大切です。」

「また医療裁判にならないためには、医師と患者との信頼関係が非常に大切です。なぜなら医師と患者さんとの間にコミュニケーションがないと、何か起きたときに争いに発展しやすくなるから。患者さんやご家族は医師を信頼、信用して病院にやってきます。医療関係者にはまずそこを分かっていただきたい。しかしもし不幸にも医療事故が起きてしまった場合は、医療関者は落ち着いてしっかりと原因を究明することが第一。その上で再発防止策を講じ、明確になった客観的事実に関しては、誠実に説明を行いましょう。」

「ここで気をつけてほしいのは『とりあえず謝っておこう』と安易に謝罪しないこと。まずは原因を究明し、過失があきらかになったときに心をこめて謝罪すればいいのです。とりあえず頭を下げておきその後はしらんぷり...というパターンがもっとも医療訴訟に発展しやすくなるので、注意してください」

DV救済のための法律的裏付けについて加茂登志子先生(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター所長)

加茂登志子先生水島弁護士の講演に引き続き、2時間目は親しい間柄の男女間の暴力、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)について、東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの加茂登志子先生よりお話がありました。

「DVには非常にさまざまな形態がありますが、大きく『身体的暴力』『精神的暴力』『性的暴力』に分けられます。多くの人はDV=身体的暴力と思われていると思いますが、実は精神的暴力の相談が非常に多いのです。相談に来られる方からも『身体的暴力は辛かったが次第に慣れた。でも精神的な暴力にはいつまでも慣れないし、どんどん自分がなくなっていくような気がする』という声を多く聞きます。」

「精神的暴力の中身としては、相手を徹底的に馬鹿にしたり、行動や交友関係を制限する、生活に必要なお金を渡さない、などが挙げられます。また性的な暴力も少なくありません。自覚がない人も多いのですが、同意がないのに性行為を強要する、避妊に協力しない、中絶を強要する、などの行為もDVに含まれます。DVが始まる時期でもっとも多いのが妊娠中や出産直後。女性が無力な時期がDVの被害に遭いやすいといわれています。」

「しかし性的暴力を受けているDV被害女性は多産であることが多く、20代でも4〜5人のお子さんがいる方もめずらしくありません。つまり子供が多いからといって夫婦関係が必ずしも良いとは限らないのです。また最近は10代のいわゆる『できちゃった結婚』のDV率が非常に高いので、今後注意してみていきたいと思っています」

DV防止法が改正されました

「皆さんにぜひ知っておいて頂きたいのは、1月11日に改正された『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律』いわゆるDV防止法です。この法律は『配偶者間であっても暴力は成立する』ことを明らかにした、非常に意味のある法律です。被害者が逃げる際には裁判所が『保護命令』を発令し、加害者に対して『接近禁止命令』を出せるようになりました。しかし実際に接近禁止命令が出されるのは身体的暴力に限定されることが多く、精神的暴力や性的暴力に関してどうやって法律を適用したらいいか、というのが今の課題です。そしてもうひとつ大きな問題が、被害者の子供たちです。母親のDV被害を家庭内で目撃し、施設に保護された児童の精神は母親と同じくらい重篤な状態にあります。多くの子供が専門的な援助を必要としているのです」

DVは女性の健康問題です

私はDVというのは女性の健康の問題だと考えています。DVをうけている女性には、慢性的な身体症状が非常によく出るんですね。具体的には頭痛・片頭痛などの慢性疼痛、食欲不振や摂食障害などの消化器症状などが挙げられます。また強制的なセックスによる性病や、性器・泌尿器の感染や外傷なども非常に多いのです。しかし病院に来る前に亡くなってしまう方も実はかなりの数に達するのではないかと推定されます。」

「また一番大きな問題がメンタルヘルス。 DV被害者は長く続く暴力や虐待でPTSD(心的外傷後ストレス障害)やひどいウツを発症していることが多く、それも症状が複雑化しているため、診断が非常に難しいのが実情です。また薬物やアルコールの乱用、高い自殺率など多くの問題を抱えているため、治療に関しては心理療法士との連携をはかる必要性があります。」

「いずれにしてもDV被害者は長期にわたる治療的な支援を必要としています。医療関係者は最寄りの警察や都道府県の配偶者暴力相談支援センター、民間のシェルターなど、DV救済の専門機関の情報を被害者に与えてあげることが必要です。また長くDVが続いていると、被害者本人に自覚がないこともあります。その場合はチェックテストを行うなどして、本人に自覚を促してあげる手助けも必要です」

DVチェックテスト
〜内閣府HP配偶者からの暴力被害者支援情報より〜

ウェブサイト

配偶者間で次のような行為があった場合は、DVの可能性があります。

身体的なもの

□平手でうつ
□足でける
□刃物などの凶器をからだにつきつける
□髪をひっぱる
□物をなげつける

精神的なもの

□大声でどなる
□実家や友人と付き合うのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
□何を言っても無視して口をきかない
□大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
□生活費を渡さない

性的なもの

□見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる
□いやがっているのに性行為を強要する
□中絶を強要する
□避妊に協力しない